四川の塩の旅も終わりを迎えた帰国前夜、四川省塩務局長陳氏から成都一番の料亭「銀杏酒楼」に招待された。すでにテーブルには、綺麗に盛られた冷菜が幾皿も並び、グラスに酒が注がれる。陳氏が「“日本の塩商”の来訪を祝して乾杯(カンペイ)」と、口の中が燃えるような酒を一気に飲み干す。
この宣賓(イービン)で作られた銘酒「五粮液」は、アルコール分52度を超す中国最高の白酒といわれ、米、玉蜀黍(トウモロコシ)、高粱(コーリャン)、もち米、小麦の五つの穀物からつくられている。
次々と運ばれる料理のなかで、最も興味を引いた料理は、“四川ダックの丸焼き”であった。こんがりと焼かれた四川鴨が背開きにされて皿に盛られた、一見いたってシンプルな料理であるが、そのスモークされ、脂肪が抜けた鴨のパリッとした食感と芳醇な香ばしさ。実に素晴らしい味だ。
そのとき、北京ダックに勝るとも負けない味だと感嘆し、この料理の名を聞くと、それは「樟茶鴨(シャンチャーヤ)」という四川の名物料理だという。
口福これに尽きる陳さんの心づくしのもてなしに感謝する。老朋友再見(ラポンユウサンチェン)。
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