ゆとり社会は過保護&管理社会でもある。子供の過保護の押し付けは困りモノだが、子供はそれに気づかない。思い出すと私にもその傾向があった。
「パパは九十過ぎだから一人歩きは危ないわ」
「この暑さに商店街に買い物にいらっしゃるの? 私も行くわ」という風に。そのたびに、
「ダイジョウブ。一人がいいの」
「ほっといてちょうだい」なんて言われた。あとから考えると、パパのあの頃なら、たしかに子供の心配しすぎだった、と気づくのである。
シニアは、夢ゆめ、お節介コドモのたわごとに従ってはいけません。
「私はステーキを食べるのよ」
「食べ物ぐらい自分できめられる。荷物を持ってくれるからって、食事に口出ししないで」
ときっぱり宣言しなければ。トシとったからと子供に遠慮すると、子供はよりプッシュするようになる。シニアはつよくなること。自分の自由は自分で守らなければ。
うちではおかしな現象が最近、起こっている。朝食が親子ぜんぜん別モノで、娘のアミが和風で、私はぜったいに洋。食卓さしむかいでフォーク対おはしである。夕食は一緒につくり、同じ料理だけど。
朝食については、私はだんぜんアメリカン・ブレックファスト。フレッシュジュース、ハムやベーコンに卵、トーストにコーヒー。子供時代からの習慣は変わらない。アミはコーヒーは飲むけれど、この半年は、ダイエットで和風に徹する。キノコや大根おろし、ご飯にわかめやキュウリ、お豆腐、若鮎の木の芽だき。私がアイスクリーム、彼女は栗蒸し。
「うちは、まるで逆ね。ママの食べるのが子供世代風で、アミのが親世代じゃない?」アミが笑う。
「朝が和風じゃ、私は力が萎えちゃうの」
食べ好きは一生、居ながら楽しめる「趣味」だから、大事にしよう。
「今朝はバジルのオムレツにしようかな」
「今晩はビーフストロガノフがいいな」
「ゆうべご馳走だったから、今晩はキュウリのサンドウィッチとスープで気軽サパーにしよう」
健康チェックを年に一度していれば、これを食べるな、あれにせよ、なんてクヨクヨすることはない。コレステロールが心配だから肉やバターはとらないという人に、こんなお話を――私もコレステロールは正常よりちょっと高い。でもお医者さまは、
「良性のコレステロールだから気にしなくていいですよ。それに若い人なら先の心配もあるけど、あなたや私はもう気にしなくていいトシなんです」とにっこり。私はとても気楽になった。
シニア世代は、世間に左右されない、子供世代にかきまわされないことを基本にして、むかしの映画の題みたいに「我が道をゆく」――Going my wayで食を楽しむのがいいのじゃないか。
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