八ツ橋一筋の名店《聖護院八ツ橋総本店》は「八ツ橋」を基本にした新商品の開発にも力を入れている。常務の内林孝三さんに伺った。
三百年余の歴史を有する「八ツ橋」

―「八ツ橋」はいつ頃生まれたのですか。

内林 江戸時代前期、元禄の頃、近世箏曲の祖と呼ばれる八橋検校(やつはしけんぎょう)に由来します。なくなられて聖護院の森、黒谷の金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)に葬られましたが、遺徳を偲んで参詣する人が絶えませんでした。そこで門弟たちは検校に因み、琴をかたどって干菓子を作り、これに「八ツ橋」と名付けました。これを黒谷の参道で販売するようになったのが八ツ橋の始まりです。
当社の前身は《玄鶴堂》といいますが、創業されたのは元禄二年(1689)、検校の歿後四年といわれています。

―八ツ橋が有名になったのは。

内林 大正天皇の御大典(即位礼)が京都御所で行われたとき(大正四年)でした。御大典を一目見ようと全国から大勢の人が京都に集まりました。国に帰る際に、美味しくて日もちのするお菓子として八ツ橋がとても受けたのです。

―当時の商品は「焼き八ツ橋」だと思うのですが、「生八ツ橋」はいつ生まれたのですか。

内林 「生八ツ橋」は昭和三十五年(1960)の祇園祭の前日、表千家即中斎(そくちゅうさい)宗匠のお茶会で、長方形に切った生八ツ橋で漉しあんを包んだ菓子をお出しし、大変ご好評を頂きました。その後これに改良を加えて、『つぶあん入り生八ツ橋・聖』という名をつけて売り出したのが始まりです。

「生八ツ橋」と「八ツ橋」の違い

―「生八ツ橋と」「八ツ橋」の違いは何ですか。

内林 「生八ツ橋」というのは、生の状態というのではなく、その生地は蒸して味もつけられております。それを薄く伸ばして焼くと「八ツ橋」になります。商品としての『生八ツ橋』はあんこを包んでいない皮だけの物で、あっさりとした甘味を好まれる方にはいいですね。これに粒あんを入れたのが『つぶあん入り生八ツ橋・聖』です。これは人気抜群です。生も焼きも、生地の原料は米の粉(うるち米)で変わりませんが、使用するニッキや砂糖は違います。

―商品としては、八ツ橋一本ですか。

内林 そうです、あくまで八ツ橋の専門店として京菓子の美味しさを守る。背伸びをせず、適正な規模を守りいつまでも多くのお客様に御満足いただけるようにする、というのが社長の考えです。
また八ツ橋にとことんこだわる会社が一社くらいあってもいいんだと。私共もそう思っております。

八ツ橋を基本にした商品開発

―商品開発についてのお考えは。

内林 あくまで八ツ橋を基本にした新商品の開発です。例えば、八ツ橋に白蜜をかけながら白く結晶させた『霜の橋』という商品が昔からありますが、その風味にショウガや抹茶の味を加えた新しいバリエーションのものも商品化しております。
また生八ツ橋を団子状にした『かきつばた』という商品があります。これはかきつばたの形に伸ばす前の団子を手捏ねして、型で抜いていますが、団子はいまでも杵で搗き、砂糖合わせも手でやっています。機械より綺麗に砂糖が入り、艶が全く違います。団子も引き締まって一味も二味も違い、この『かきつばた』は格別自信のある商品です。
また生八ツ橋では昨今、京都の古来より伝わる旬の素材を『あん』に生かした『旬菓・聖』(季節限定品)を提供させていただいております。春から『桜・皐月・梅・芋・栗・柚子』となっております。生地は通常の生八ツ橋を使いますが、包む『あん』はそれぞれの季節の旬の素材を充分に生かし季節感を豊かにお楽しみ頂いております。
八ツ橋一筋を変えることなく、同時に関連商品をさらに開発し、八ツ橋のバラエティ豊かな味を多くの方々にお楽しみいただけるよう努めていきたいと思っております。

―月刊「味の味」名店ききがきより抜粋―

《聖護院八ツ橋総本店》本店(山王町)
「聖護院 生八ツ橋」
「八ツ橋缶」
「かきつばた」
「つぶ栗あん入り 生八ツ橋」
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聖護院八ツ橋総本店
住所
京都市左京区聖護院山王町6番地
TEL
075-761-5151(代)
FAX
075-771-2114
営業時間
本店8:00〜18:00
熊野店9:00〜19:00
定休日
年中無休 (P有り2〜3台)
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