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僕の好物というと、どうもネバネバ系の食べものが多いようだ。今思いつくだけでも、納豆、トロロ芋、メカブ、モロヘイア、それにホンダワラ(アカモク)の種の部分、そしてオクラ。いずれも健康を維持する為の食品として、マスコミ等でお薦めの食材である。どうしてこのネバネバが体によいのかは判らない、しかし何となく体によい作用がありそうな気がする。いや、食べ終わって数時間後も経つと、体が軽くなったような気分になると言ってもよいだろう。ま、体に効くとか効かないは別としても、すこぶるおいしい。このおいしさが、食欲を促してくれるから、暑さで消耗をしてしまった体力を取り戻すのには、絶好の食材と言えるのではあるまいか。

中でも、おくらが嬉しい。味噌で炒めてもおいしいし、さっと湯がいて酢醤油と切りゴマをかけて味わっても旨い。また、細かく小口切りにして、湯に通し納豆のようにかき混ぜて粘りを出す。これにカツオ節を混ぜ、やはり酢醤油で味を整え熱々ご飯にたっぷりと乗せ味わう。そう、トロロ感覚である。人によるが、青臭さが嫌だと言うけれど、僕には青臭さが爽快感とつながるから面白い。匂いと言えば、ネバネバヌルヌル食品の中で一つだけ苦手な野菜がある。つる菜とかつる紫という、夏の貴重な青菜の類い。この菜っ葉も湯通しを味わうのだが、どうにも独特の泥臭さに耐えられない。同じような傾向の野菜に、ホウレン草の根の赤い部分があるが、出来れば避けて通りたい。全く食べられないという訳ではないけれど、おいしさを感じられないのである。

Kubota Tamami

大好物のおくら、僕はてっきり日本固有の野菜と思っていたのだが大間違い。どうやら、アフリカはエチオピア辺りが原産地であり、世界中のかなりの国々に伝播している。しかも、ほとんどの国の呼び名が、発音やアクセントの違いはあれ『オクラ』であることには驚いた。従って、アフリカを訪れた際にもバザールでおくらを見つけ、狂喜して買い求め酢醤油にて味わった。また、ブラジルやペルーにもおくらは存在し、天ぷらにして味わったり味噌汁の具材として重宝した思い出がある。大体どの国に行っても、『オックラ』と発音すると通じるようだ。インドではカレーの中に入っていたので、市場で探し当て『オックラ』を連発したのだが通じなかった。恐らく、別の呼び方をしているのであろう。

ともあれ、おくらの中にはペクチン、アラピン、ガラクタンという粘り気の基となる成分と、ビタミンA、B1、B2、C、 カルシウム、カリウム、ミネラル等々夏バテ解消の栄養素が多々入っているそうな。そして、最近はおくらにも二つの種類があることが分かった。おくらの実が五角形をした従来からよくある品種と、沖縄などで食べられている筒形の丸いものがある。五角形のものは少々筋が固く、丸形のものは多少柔らかいような印象はあるが、味の差はほとんど感じられない。どちらもおいしいから、これを味合わない手はない。さりとて、毎日同じような食べ方をしていたら、てきめんに飽きが来るのは必定。何かおいしい食べ方はないものかと思っていたら、宮崎の小料理屋さんで素晴らしく旨い料理に巡り会った。

先ずおくらを湯に通す。これを細かく切って、ミキサーで粉砕する。この時、おくらだけだと粘ついて空回りするだろうから、昆布出汁に追いガツオをして冷まし、少しずつ加えて酒と薄口醤油で味を整える。これをギンギンに冷してガラスの器に盛る、おくらの和風ビシソワーズだ。勿論、同じ方法でチキンスープで伸ばし、生クリームを加え白ワインと塩で味を整えると、高級な洋スープの完成。



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