岡山県北部の山合いに湧く美作三湯の一つ湯原温泉は、巨大な露天風呂「砂湯」で広く知られる。瀬戸内海に注ぎ込む旭川の上流を望む川辺に建つ《八景》は、専用露天風呂付き客室、禁煙ルームがある全三十四室の閑静な佇まいの宿。供されるのは「山里料理」、地元農家の新鮮な野菜を中心に、旬の川魚、作州牛、地鶏などをバランス良く配した月替わりの会席である。同宿の一泊二食の中には、実に五十種類以上の野菜が使われている。

「ぼたん鍋」は冬の人気メニュー。湯原の猪の肩ロースとバラ肉を用い、蒜山大根、雪下葱、金時人参、ささがき牛蒡、芹など地の野菜ときのこが入る。出汁は赤味噌仕立てで山椒が利いており、よく煮込んだ肉を卵の黄身と大根おろしを合わせたたれで頂く。猪肉は牛肉に比べ、ビタミンB1が多くカルシウムも倍以上含まれ、脂に独特の旨味がある。
山里の冬景色を愛でつつ味わうのに相応しい、体を芯から温めてくれる鍋料理である。
■写真提供:《八景》
岡山県真庭市豊栄1572 TEL.0867-62-2211(代)