春の訪れを感じさせる和菓子『桜餅』、その起源は江戸時代にある。四代将軍家綱は正保年間、常陸国桜川から隅田川べりに桜を移植、その後、江戸の緑化に熱心であった八代将軍吉宗が享保二年、新たに百本の桜を植え、庶民の行楽の場として提供した。当時、向島・長命寺の門番であった山本新六は、落ち葉掃除に憂慮し、また増え続ける遊客を見、桜の葉で包む餅を思い付いたという。

桜餅は、小麦粉を水溶きし焼いた皮で餡をワッフル状に包む関東風と、道明寺粉(糯米を蒸して乾燥させた粉)を用いた粒のある餅で餡を饅頭状に包む関西風に分けられるが、《桔梗屋》の桜餅は、どちらでもないオリジナルの製法。草餅や柏餅の様な食感で、餅と桜葉の間に塩漬けした桜の花がはさんであり、中のこし餡に程好いアクセントを効かせている。「サクラサク」にかけ、受験生への応援アイテムとしても好評を博している。

桜の花言葉の一つに“精神美”とある。当世風化しそうな美を探しに、花見へ行こう。
■解説・写真提供:《桔梗屋》
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