江戸時代前期、箏曲を極め、多くの名曲を残して近世筝曲の祖と讃えられた八ッ橋検校(やつはしけんぎょう)。没後、京都・黒谷の金戒光明寺常光院には墓参が絶えず、4年後の元禄2年(1689)、検校の遺徳を偲び、琴をかたどった干菓子を「八ッ橋」と名づけ、黒谷の参道である聖護院の地にて売り出した。これが八ッ橋の始まりと言う。

以来324年にわたり八ッ橋を製造する《聖護院八ッ橋総本店》は、八ッ橋とは「米粉と砂糖を合わせたものににっきで香り付けしたもの」という定義を守りながら、昭和中期には生八ッ橋でつぶあんを包んだ三角形の「聖」を誕生させるなど、新しい味も数多く作り出してきた。

表紙の聖・旬菓「くり」は、白あんに旬の栗のつぶを加えて生八ッ橋で包んだもの。栗の香りと甘みが生八ッ橋の風味とともに口の中に広がる。秋の訪れと実りを楽しめる旬の逸品である。

■《聖護院八ッ橋総本店》TEL.075-761-5151
京都市左京区聖護院山王町6